仔羊に呪われた

 ラムチョップ(半額)を食べる時は注意した方がいい。

 スーパーで半額で買ったラム肉。ステーキスパイスを軽く振り焼く。

 個人的にラム肉は臭みのある牛肉だと思っている。牛肉とラム肉なら迷わず牛肉を選ぶ。でも安ければ買う、そんな微妙な立ち位置がラム肉である。

 ラム肉にしては脂肪が多い個体だったが、僕の健康診断の結果は正常なので、気にせずに頂くとする。我ながら上手く焼けた。学生時代、モンスターハンターで肉を焼いていた経験がここで活きた。ラオシャンロン戦で友人達がバリスタを構える中、最前線に走り、肉を焼いた思い出が蘇る。あの時はバリスタで撃たれて大変だった。

 

 草木も眠る丑三つアワー、胸部不快感で目を覚ます。

 原因は直ぐに分かった。口、いや胃から羊肉特有の臭みが登ってくる。呼吸するたびに臭いし、吐き気も半端ない。

 これは仔羊の呪いだ。ベットの中で悶え苦しむ。

 仔羊にしてみれば、産まれて大して時間が経っていないのに食肉加工され、半額になるまで売れ残り、冴えない男に食われたのだ。恨む気持ちは痛い程、いや臭い程よく分かる。

 君の冥福を祈るが、全ての恨みを僕にぶつけなくてもいいのでは?こんなオッサン虐めてないで、どうかニュージーランド経由で天国へ行ってくれ。

 

 スマホで検索するも臭みの元はフィトールという元は葉緑素の物質で、それが脂肪の中に蓄えられていること。余分な脂を調理前にそぎ落としたり、酒に漬けたり、下茹ですれば臭いを抑えられること等のみ。

 僕が知りたいのは調理前に臭いを取る方法ではなく、事に及んでしまってから臭いを取る方法なのだ。脂肪が原因だから酒に漬けるのは科学的にも正しいが、それを僕の消化管で行うと急性アルコール中毒まっしぐらである。

 ちなみにブレスケアはない。ニンニク料理の後の臭いは確かにエチケットとして気になるが、人と会う予定がある場合はニンニクは食べないからだ。それにニンニクを食べた後の臭いで自ら悶絶することはないが、この羊の呪いは悶絶するレベルである。ブレスケアでは太刀打ちできないであろう。

 

 もはや僕に出来ることは、ただ耐えることだけであった。朝食は殆ど食べれそうになかったが臭いには乳製品と思い、ヨーグルトを少量口にした。

 昼食も食欲がなかったため賞味期限が2021年の缶詰。ちなみに美味しく頂けた。

 そしてラム肉食後、20時間経過したあたりで、仔羊の呪いは解けた。

 

 しばらく、ラム肉は食べたくない。