虫歯現る

 脳:右の奥歯(下)に違和感アリ。大至急チェック。

 目:奥歯に黒点があるんだけど、これ?

 脳:それだ!歯科へGO。

 

ウルチ:先生、右下の奥歯に虫歯があるみたいなんですけど…

歯科医:ああ、これ。これはC0だから削らなくても大丈夫だよ。虫歯ってのは…

    鏡をウルチに手渡す。

歯科医:これ。C1だね。

 鏡に映る真っ黒な溝。僕が竜王と思っていたのはスライムで奥の方にミルドラースがいたのだ。

歯科医:まあ、そこまで進行していないから治療は次回にしようか。

 僕にとってのミルドラースは先生にとって「さまようよろい」程度の相手であった。それより問題は今回治療しないという点だ。虫歯になった以上、削らなくてはならない。いつ削るか、今でしょ!

 結局、歯石取りを行ってもらい、3000円払い帰宅した。

 

翌週

 ミルドラース改め、さまようよろいと対峙する時が来た。予約より10分早く来院し精神統一。我が心、明鏡止水。これで2回行動可能である。最もばくれつけんとか使えないので防御しか選べないのだが…

女性:ウルチさーん。奥の席にどうぞ。

 この歯科医院には仕切りのない手前の席が3つと半個室状態の奥の席が2つある。恐らく奥の席は親不知を抜く時など出血の可能性がある治療を行う席なのだろう。

 僕が案内された席は奥の席の奥の方、最深部とも言える席であった。

 しばらくお待ちください。そう言われて待つが10分程、誰も来ない。スマホは電源を落としているし、暇を潰せる雑誌などもないので僕はひたすら治療用モニターに映されるインプラント治療の広告を眺めていることしかできなかった。顎の骨に穴開けるなんて怖くね。

歯科衛生士:お待たせしました、ウルチさん。今日は虫歯の治療ですね。その前に歯茎の状態のチェックをしますね。

 細い針状のものを歯と歯茎の間に入れられる。歯周ポケットのチェックだ。この検査の重要性は理解しているが、痛いのだ。そこは何かを入れる穴ではないのに、そんな硬くて尖ったものを強引に入れられたら余計に広がってしまうではないか。

歯科衛生士:歯茎の状態は良いようですね。ブラッシングとフロスを継続してくださいね。

 涙目になる寸前で歯周ポケットチェックが終わり、一息吐くとついにあの時がやってきた。

歯科医:もしかしたら虫歯が神経に触れてて削ると痛いかもしれないけど、たぶん大丈夫だから麻酔なしでいくね。痛かったら手を挙げて教えてね。

 痛みを感じなくさせる麻酔を使うために痛みに耐えるという矛盾。それでも神経にドリルが当たれば痛みは天元突破するだろう。

ウルチ:(先生、不安なら使おうよ…)

ドリル起動

 物凄い音と衝撃が顎から伝わってくる。いつ来るか分からない痛みに備え拳を握る。もしもの時に備え手を挙げるイメージトレーニングもバッチリである。

 結果として痛みを感じることなく治療は終了した。先生の見立ては正しかったのだ。しかも支払いはなんと1200円。

 今回、虫歯の治療に4200円使用した。今月の配当金は65.33$だったので治療費分は不労所得で賄えるようになりました。