代車、ママチャリ

 ママチャリにはママチャリの良さがある。

 昨年末、自転車の変速機の調整のために近所の自転車屋を訪問した際、ギアを見た店の主人から「7速と8速のギアが酷く摩耗しているから使わない方がよい」と指摘された。確かに他のギアに比べて明らかに小さくなっており、今年で10年目となる相棒(エスケープR3 2012年モデル)の消耗を感じた。

 自転車は余程のことがない限りパーツを交換すれば走れるので、ギアとチェーンの交換を依頼すると年明けにしかパーツが入ってこないらしく、それまでは修理不可能とのこと。

 

 この間の休みに再訪問し修理を依頼しました。パーツは届いており、修理は可能で料金はパーツ代・工賃込みで税込7500円とのこと。Amazonでパーツ価格を見ると幅はあるものの、それぞれ3000円位するので儲けがあるのか心配になるレベル。先客がいたので修理完了まで4時間程掛かるので代車を借りることになりました。

 

 Panasonic製の自転車、形状はいわゆるママチャリ。前カゴに後ろは荷台。オートライトに備え付けのカギ。安心と信頼の質実剛健仕様だ。今回の代車は荷台部分にカゴが装着されており、積載量と使い勝手を向上させている。ほぼ全てのパーツが日常生活に最適化され製造されている。

 僕とて中学から大学までママチャリに乗っていた身、扱いは慣れているはずである。いざ、出陣。

 

 サドルが低い、とても低い。僕としたことが、調整を忘れていた。適正な高さに調整し、再出撃。

 漕いでも漕いでも進まない。遅いし重い。普段、入門用とは言えクロスバイクに乗っているので、性能差に愕然とする。10年前、初めてクロスバイクに乗った時、同じ自転車とは思えない走行性能に驚かされたが今は真逆のことをしているのだ。しかも10年の歳月は僕から体力と若さを奪っていた。

 さらに自転車屋の自転車なのに整備が行き届いていないのかペダルを漕ぐ度に「キー」と鳴る。哀愁を感じた。またサドルの形状が僕のプリケツに合っていないのか、痛みを感じる。

 普段なら寄り道をするのが、楽しみの一つだがそれどころではない。足に貯まり続ける乳酸と尻の悲鳴のため、真っ直ぐ帰宅ルートを進む。ママチャリとはかくも辛い乗り物であったのか。

 

 帰宅後、昼食を取った僕は決意する。裏技『車による輸送』を使うことを。自転車乗りとして屈辱ではあったが、背に腹は代えられないというか尻に代えはないのだ。

 相棒を以前車で運んだことがあったため、今回のママチャリもいけると判断したのだが甘かった。どう頑張っても入らない。そんなにサイズが違うのか?タイヤの直径ならロードバイクの方が大きいのに入らないのだ。僕のプライドを捨てた作戦は徒労に終わった。

 

 頑張って漕いだ。この歳になって立ち漕ぎもした。恥ずかしくなって直ぐ止めた。

 

 

 おかえり、相棒。