「絆創膏の味がする」by友人のO
高校時代、部活の大会会場の自販機で見たことがない飲料を発見したウルチは、好奇心のまま購入を決意した。
そこを友人のOが静止する。とんでもなく不味いから止めた方がいいと。当時、おこずかいが月に500円だった僕は友人のアドバイスを受け入れ、購入を断念したのであった。
味について気になり、Oに質問する。そして答えが返ってくる。
「絆創膏の味がする」
お前は絆創膏を食べたことがあるのか!
「いや......食べたことはないけど、そう形容するほかない」
そこまで言われてしまうと好奇心が人一倍旺盛なウルチ、特徴的なオレンジ色の缶が忘れられない。部活の遠征や大会に行く度にエネルゲンを探すが見つからない。余りにも不味いから販売停止になったとOは嘯くが諦めたくはなかった。
時代は進み、ネットショッピングが当たり前となった今、エネルゲンを入手することは容易だ。しかし、それではダメなのだ。他者との出会う時、出会い方というのは非常に大事だ。吊り橋効果というものもある。これは商品との出会いでも同じであると考える。
僕とエネルゲンの再会は自販機でなければならない。Amazonではダメなのだ。いつもの佐川のおっちゃんがとても良い人だが、僕とエネルゲンの間には入ってほしくない。眺めの良いレストランで恋人と食事する際に、知らないおっちゃんと相席になったら台無しだろう。それと同じだ。
実は僕、ウルチは日頃の激務により精神のダメージを負っている。上司に相談したところ臨時休暇を頂けることになった。気晴らしのため、自転車で出掛ける。
子供の頃よく遊んだ公園や七五三や初詣に行った神社、そして部活の大会に行く際に利用した駅。過去を懐かしみながら、ペダルを漕ぐ。
駅前の商店街の脇道に入る。ただでさえ寂れた商店街、その脇道は営業しているのか不明な居酒屋の入った雑居ビルやボロボロのアパートなど地方の衰退を象徴しているような建物ばかりであった。こんな所、ほぼ誰もこないのに置かれた自販機には哀愁すら感じる。
オレンジ色の缶を見つけるまでは。
その瞬間、世界は色付いた。道路を急いで渡り、近くで確認する。エネルゲンだ。しかも110円。隣のポカリスエットも110円。ここは令和3年なのか?ここだけ現代から取り残されていないだろうか。
即決。ここには僕を止めるOはいない。それに精神エネルギーを失っている僕にエネルギー+源のエネルゲンはもはや運命の出会いと言っていい。
先ずは匂い。オレンジのキャンディーの匂いがもっとも近い。ポカリスエットやアクエリアスとは異なる爽やかな匂いだ。勿論、絆創膏とは程遠い。
次に色。やや黄色味がかったオレンジ。
最後に味。オレンジジュース9割ニンジンジュース1割。普通に美味しい。ポカリスエットよりも好き。なんでもっと売らないの?
おい、O。絆創膏に近いのは色だけだぞ。
当時からかなりの年月が経っているので改良された可能性があるが、これはOが味覚音痴なだけかもしれない。
ここからは商品紹介だ。エネルゲンは持久運動時のエネルギー補給を目的として開発されたドリンクであり、ポカリスエットのように弱った時に飲むのではなく現在進行で運動中に飲むものだ。味にニンジン感を感じたのはβカロテンが含まれているから。
謎なのは原材料名の2番目に果汁が書かれているが、他の場所には大きく無果汁と書かれている点。なにか理由があるのだろうか。